開発ストーリー

ホーム開発ストーリー伝送損失を抑えて次世代通信の可能性を広げる低誘電・接着性・加工性すべてを満たす新素材の開発

伝送損失を抑えて次世代通信の可能性を広げる低誘電・接着性・加工性すべてを満たす新素材の開発

低伝送損失材

開発のきっかけ

近年、自動車の先進運転支援システム(ADAS)に用いられるミリ波レーダーや第5世代移動通信(5G)のインフラ、端末機器、それらの情報を処理するデータセンターなどが急速に発展している。これらをはじめとした次世代の高度情報通信社会は、高周波・高速通信に支えられており、この分野の技術革新が求められている。その中で、現在注目されているのが低伝送損失材の活用だ。
これまで低伝送損失材として一般的に用いられてきた有機材料は、低誘電のフッ素系樹脂や液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂だ。熱可塑性樹脂は接着性と耐熱性に課題があり、銅配線との接着性や基板加工性に適さない。銅配線との接着性は粗い銅箔を配線に用いていたが、粗さが大きいため回路の損失が大きくなり、伝送損失の低減を妨げていた。

一方、銅配線との接着性が高く加工性に優れた熱硬化性樹脂は、比誘電率、誘電正接が高いため、樹脂による損失が大きく、粗さの小さな銅箔を回路に用いても伝送特性を十分発揮できなかった。
「熱硬化性樹脂の接着性や加工性と、熱可塑性樹脂と同等の低誘電。両者の特性を活かした材料を開発できないだろうか?そうすれば、これまで以上に伝送損失が低減して、回路設計の自由度も高めることができる。これからの新しい回路デザインの可能性を広げられるはずだ」それがこの材料開発のきっかけだった。

技術の壁

開発担当者は、新規の熱硬化性樹脂の開発に着手した。当初得られたサンプルは、接着性に優れるものの、熱膨張が起こり易い。これを抑制するため、支持基材として一般的に利用されているガラスクロスに樹脂を含浸せざるを得なかった。しかしながら、ガラスクロスは、樹脂より比誘電率が高く、伝送特性を満足することが出来なかった。そこで、支持基材をガラス以外の低誘電の素材に置き換えたが、肝心の加工性に課題があり、耐熱性も不十分であった。

「低誘電」「接着性」「加工性」のすべてを優れたレベルで実現するためには、さまざまなトレードオフを解決するブレイクスルーが必要であった。

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