開発ストーリー

ホーム開発ストーリーますます難しくなる電子機器の熱対策 高集積半導体パッケージを冷ますシートの開発

ますます難しくなる電子機器の熱対策
高集積半導体パッケージを冷ますシートの開発

黒鉛垂直配向熱伝導シート

開発のきっかけ

AI、IoTといった情報技術の高度化によって、半導体デバイスが処理する情報量・速度は著しく増加している。半導体デバイスはこれに対応するため、高集積化、またチップやパッケージサイズを大型化することによって、その処理能力を向上させてきた。しかし高集積化と大型化に伴い、従来から課題であった半導体パッケージの熱対策は、さらにその難易度が高まっている。

高集積化によって発熱密度が高まることで、パッケージの温度上昇は以前より大きくなっており、従来の一般的なグリースでは熱伝導率が不足する。また、チップやパッケージの大型化が、さらに熱対策を難しくしている。大型化によって、熱サイクル時のチップ、パッケージの反り量も大きくなり、それらに実装されている熱伝導材料が剥がれ、放熱性を充分に発揮できなくなっているのである。またグリースが使用されている場合は、チップが繰り返し反ることによって、チップと放熱体の間にあるグリースを押し出すポンプアウトという不具合も起こっている。

日立化成とお取引きのあるお客さまも、チップとヒートスプレッダ間にグリースを使用していたが、上記のような問題が起こっているという。「パッケージの反りで剥がれず、部品温度を下げる材料がほしい」との要望を受け、新たな熱伝導シートの開発が始まった。

技術の壁

開発者は、パッケージの反りによる剥がれやポンプアウトを抑制するには、グリースのようなペースト状ではなく、柔軟性に優れるシート状の熱伝導材料に仕上げる必要があると考えた。

日立化成は独自技術であるフィラーと樹脂の複合材設計技術を用いて、エラストマー中に黒鉛フィラーを垂直に配向させた「黒鉛垂直配向熱伝導シート TCシリーズ」を販売している。この材料の熱伝導率は、実装時に25~45W/(m・K)を発現し、当社の熱伝導シートラインアップの中でもトップの放熱性能を有する。このシートで課題解決を図ろうと考えたが、現状のままではお客さまが満足するに至らない。
熱伝導率は、お客さまが求める値を満たすことができるが、パッケージが反るとグリースと同様に剥がれてしまうからである。この原因は、シートの硬さにある。高い熱伝導率を確保するために、黒鉛フィラーを高充填したシートは非常に硬くなり、パッケージの反りに追従できない。黒鉛フィラーの充填量を減らせば、柔軟性を付与することができるが、熱伝導率は下がってしまう。
この背反した特性の両立に開発者は取り組むこととなった。

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