開発ストーリー

ホーム開発ストーリープラスチックを傷・汚れから長期間守りたい 異分野の協力が生んだ防汚コーティング

プラスチックを傷・汚れから長期間守りたい
異分野の協力が生んだ防汚コーティング

耐摩耗はっ水ハードコート材

開発のきっかけ

樹脂の表面に塗布することで、防汚性やはっ水・はつ油性、耐摩耗性などの性能を向上させる塗料、それが「ハードコート」だ。UV光を当てて固めると、ツルツルとした感触と光沢感を実現できる。現在、スマートフォンやノートPCなどのプラスチック筐体の表面を傷や汚れから守るために用いられている。
今後、通信システムが現在の4Gから5Gに変更されるにあたり、スマートフォン用筐体を形成する素材も従来の金属から、高周波電波を通しやすいプラスチックなどに変わっていく流れがある。それに伴い、金属に比べて脆弱なプラスチックを傷や汚れから保護するためのコーティング技術へのニーズが高まることが予想されている。
以前より、スマートフォンメーカーなどのお客さまから当社のハードコートに対し、「最初は良いが、長く使うにしたがって指紋や汚れがつきやすくなる」と改善を望む声が寄せられていた。
また、スマートフォンの素材変更は、筐体のみならず、軽量化や屈曲性の観点からディスプレイもプラスチック化へ置き換わると予想されている。ハードコートにより、傷や汚れから表面を保護する特性を長く維持できる技術を実現できれば、自社や素材メーカー、ユーザーすべてに新しい価値をもたらすことができるはずだ。そのことを確信し、当社ではこの技術開発に着手した。

技術の壁

「こすっても傷がつきにくい」プラスチック用ハードコート材は、従来の当社の技術で十分実現できていた。しかし摩耗回数を重ねるに従って、傷がない状態は維持しているにも関わらず、徐々に汚れが付着しやすい状態になってしまっていたのだ。初期の防汚特性が維持できないというこの大きな課題を解決すべく、検討を開始した。
防汚性能を持つハードコート材は、主にアクリルなどの「ハードコート用樹脂」と、フッ素・シリコーン系材料といった「防汚成分」の2つの素材から構成されている。開発部では、「防汚特性の低下原因は、ハードコート用樹脂と防汚成分の結合性の低さにある」という想定の下に試行錯誤を繰り返した。防汚成分の量を増やす、あるいは種類を変更するなどして、それがハードコート用樹脂と混ざりやすくなるような工夫を施したが、なかなか結実しなかった。
「2kg荷重のスチールウールによる過酷な摩耗試験を経て尚、外観・防汚性能ともに変わらず維持できる」こと。それが理想だが現実はほど遠く、たった500回程度の摩耗によって既に防汚性能が低下している状況だった。
塗る前はハードコートの中に均一に混ざっている防汚成分が、塗布した後には最表層に浮き上がる工夫を施していた。さらにUV光を当てると、ハードコート用樹脂と結合して防汚性能が落ちにくくなるような設計にもしていた。にも関わらず、結果が出ない。
「もう無理かもしれない…」。トライアンドエラーを繰り返し、解決できない難題を前に、新規開発は一旦ストップした。

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