開発ストーリー

ホーム開発ストーリーレーザープロジェクターをもっと見やすくしたい… 理想的な美しさを実現する「小さな光学部品」の実力

レーザープロジェクターをもっと見やすくしたい…
理想的な美しさを実現する「小さな光学部品」の実力

スペックルノイズ低減部品

開発のきっかけ

レーザー光源のプロジェクターでスクリーン画面に投影させると、散乱された光の中に不規則な粒状模様のざらつき(スペックルノイズ)が現れる。プロジェクターメーカー各社は、画像や映像を見るうえで妨げとなるこの“ざらつき”の対策として、拡散板を振動させる等、さまざまな工夫を施している。しかし、「スペックルノイズをさらに低減し、高画質の画像・映像を実現したい」というニーズはプロジェクター業界の総意であった。
一方、日立化成は、近年注目されていたARグラス*のディスプレーに使用する、出射光の光強度を均一化する技術の研究開発を進めていた。具体的には、グラスの混色部の体積を小型化する樹脂製の光インテグレーターである。眼鏡形状のウェアラブル端末であるため、小型軽量化が強く求められており、当社では長年培ってきた樹脂等の技術活用した製品開発を進めていた。ところがARグラス市場の拡大が想定以上に遅れ、製品開発存続の判断を迫られる状況にあった。
「ARグラスで培ってきた光強度の均一化技術の価値を、他の製品へ活用することができないか。」社内で検討を重ねる中で、この均一化技術を実現する光の「散乱」現象に着目した。光の散乱は、レーザープロジェクターのスペックルノイズ低減対策においても採用されており、当社の光強度の均一化技術が活用できるのではないかと考えた。また、近年、開発が加速する小型プロジェクターにおいては、パーツサイズの制限から、LEDよりもレーザーの採用が適している。この点でも当社技術の価値を活かすことができると仮定した。こうして、小型レーザープロジェクター用途への応用展開を目指し、舵を切る方針を決めた。

*AR (Augmented Reality) グラス:映像や画像などのデジタル情報を表示し、本当にそこに存在するかのように現実を拡張するウェアラブル端末

技術の壁

小型レーザープロジェクターのスペックルノイズ低減部品を実用化するにあたり、最大の難題は画像・映像の明るさを維持するため、いかに「光利用効率」を高めるか、ということであった。実際、開発段階で試作品を持ち込み、評価をお願いしたプロジェクターメーカーのご担当者からは、「光利用効率が50%程度(当時)のままでは実用化は厳しい。80%以上に改善してほしい」という要望があがっていた。
当社のスペックルノイズ低減部品は、光の透過性が良い透明な樹脂の中に、光を散乱する高屈折率の粒子を充填した形態となっている。光がこの部品を透過する際に、充填した粒子によって散乱されることで、スペックルノイズを低減させるという設計である。
「光利用効率が低い」という課題は、充填している高屈折粒子によって光の透過が妨げられていることが要因だった。光利用効率を上げるためには、部品の要である高屈折率材の粒子の充填率を下げるしかない。しかし、本来の目的であるスペックルノイズ低減の効果までもが下がってしまい問題解決にはならない。
「光利用効率を高く保ちながら、可能な限り高精度でスペックルノイズを低減する」。この背反した性質の実現に向けて、最適な粒子の充填量を求めて実験を繰り返した。

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