開発ストーリー

ホーム開発ストーリー“5G”時代に向けた絶縁材料 伝送損失を下げられたカギは?

“5G”時代に向けた絶縁材料
伝送損失を下げられたカギは?

低誘電感光性樹脂

開発のきっかけ

高速・大容量通信を可能にする通信技術として、実現が近づく第5世代移動通信システム(5G)。10GHz以上の高い周波数帯の電気信号が用いられ、この快適な通信を実現する。一方、高周波帯の電気信号を使う通信では、伝送損失をいかに抑制するかがカギとなる。これまでセンサー基板といった電子部品では、感光性ポリイミド樹脂が部品内の層間絶縁膜として多く採用されてきた。これらの電子部品が、将来数十GHz以上の周波帯で通信するようなシーンでは、伝送損失を抑えるために、絶縁膜には現在よりも低誘電特性が求められるようになる。
来るべき5G時代を見据え、当社では、比誘電率3.0以下、誘電正接0.0030以下を目標に掲げ、低誘電の感光性樹脂の開発をスタートした。しかし、目標とする特性に対し、開発品の特性は半分にも至らない状態が続いた。開発プロジェクトの進展には解決すべき課題が数多く存在したのである。
このような中、開発チームは、目標に合致する樹脂材料を開発するスタートアップ企業の情報を、社外技術の導入支援を行う部門から受け取った。自社開発の継続か、それとも外部から技術導入か。社内での検討の結果、チームはスタートアップ企業から低誘電感光性樹脂の導入を決めた。

技術の壁

新たに導入したこの低誘電感光性樹脂の試作など、量産へ向け開発チームメンバーは準備に動き出す。導入元のレシピに基づき、当社の設備要件などを考慮して再現性のある製法を確立することが目的である。しかし、試作・検証を行なう中で、チームメンバーは、この低誘電感光性樹脂の量産に、重大な課題を抱えることを気づくことになる。導入した樹脂の製法は非常に特殊で、想定した販売価格にはとても収まらない、という事が明らかになったのだ。
お客さまに提供しやすい価格で量産を実現するために、材料・工程ともに見直した独自の新製法を創り出す、という事が開発チームのミッションとなった。もちろん新たな製法は、導入した低誘電感光性樹脂の性能を確実に再現する必要がある。
最初に開発チームは、この低誘電感光性樹脂と似た構造を持つ樹脂を社内から探し、その製法に倣って試作に取り掛かった。この方法であれば、当社で十分に実績のある製法であり、製造コストを下げられると判断した。チームの仮説のとおり、材料の見直しや、工程の短縮を図ることに成功する。しかし、その試作で得られた樹脂の誘電正接は、本来発現すべき値の2倍以上もかい離していた。更に感光性能も低下しており、フォトリソグラフィによる微細なパターン形成ができない状況であった。「目標値を満たす技術を導入したのだから、製品立ち上げは早い」というチームメンバーの思いに反し、作ることすらままならない状況に陥ってしまったのである。

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