開発ストーリー

ホーム開発ストーリー熱対策への新たなアプローチ ポリマー設計技術で実現した熱を吸収するシート

熱対策への新たなアプローチ
ポリマー設計技術で実現した熱を吸収するシート

熱緩衝シート(蓄熱材)

日立化成ならではの技術

蓄熱性能をもつ分子構造と、形状維持の性能をもつ分子構造の2種類の構造をもつポリマーを設計した。しかしポリマー化の副作用として、結晶性が低下して性能が十分に発揮できていなかったこと、また吸熱後、性能を回復させるための放熱性が低下するという新たな課題が生じた。ポリマーが分子レベルで複雑に絡み合っており、熱が伝わっても蓄熱性能をもつ結晶構造が一度崩れると元に戻りにくくなり、その結果として温度が下がりにくい特性として表れた。
日立化成には、さまざまな性能をもつシートに展開してきた経験がある。例えば、半導体チップの絶縁接着用の「ダイボンディングフィルム」やCPUの放熱用の「膨張黒鉛垂直配向シート」がそれに当たる。いずれも物性の制御や分子構造設計技術、そしてそれらをベースとした複合材料の分散状態の制御する技術などを開発、複数の性能を共存することに実現し、シート化に成功していた。
開発担当者は、これら技術を熱緩衝シートの開発にも応用できるのではないかと考え、試作品の製作に着手した。2つの性能をもつポリマー設計というコンセプトはそのままに最適化を進めることとした。蓄熱性能を高めるために素材が本来持つはずの結晶性を発現させること、および放熱性を高めることが両立できるポリマー構造の設計をおこなった。具体的には複合材料の設計技術を応用して組成を定め、分子構造と物性の傾向が見えたらシミュレーションによって組成を最適化する、何度もこれを繰り返し実施した。予想した傾向に合う場合、合わない場合を見極めながら検討を繰り返し、検討組成は300以上にも上った。
こうした分子構造の精密な設計と、その素材が発現する蓄熱性能など物性の関係性をひとつひとつ明らかにしていった。そしてついに、約2年半かけて当初の2倍の蓄熱性能を持つ高蓄熱材料シート材料「熱緩衝シート」を完成させることに成功した。蓄熱性能を2倍にできたことにより、以前の潜熱蓄熱シートの半分の体積で同様の蓄熱性能を発揮することができる。これは発熱量の増加とともに軽薄短小が進むスマートフォンなどエレクトロニクス機器では特に効果が生まれることを期待している。

今後の展開

熱源からは熱を逃がしたい。しかし、周辺の部材にはこれ以上熱を伝え、逃がすことができない。発熱量の増加によって、伝熱材料を使った放熱構造だけでは熱の制御が困難になっている。「このような課題は、高性能化する様々な電子機器で解決が求められるようになるでしょう。電熱材料に今回開発した『熱緩衝』性能を組み合わせて、モバイル機器だけでなく、自動車の電子部品の熱対策でも貢献したい」そう開発者は熱く語る。

熱緩衝シートのソリューション

「モバイル機器が熱い」を未然に防止。電子部品の温度上昇を抑える蓄熱材

熱緩衝シート(蓄熱材)

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